ネットワークが、国家間のボーダーを意識しないでなされる性質を持ち、ネットワークが爆発的に成長している現在においては、電子商取引に必要な技術であるデジタル認証(certificate)(注1)について、わが国と、諸外国との間で、その法的・技術的問題を相互に検討する必要が生じてきている。本稿の目的は、かかるデジタル認証のトランスボーダー的な検討に際して、その前提として、わが国でのデジタル認証についての法的問題について現在の研究成果(注2)を、総合的な見地から(注3)位置づける簡潔なメモランダムを作成することにある。
(注1)
1.1で論じるように公開鍵暗号の性質を用いて認証(certificate)をするシステムをこのように呼ぶことにした。デジタル署名が、かかる認証の手段的性格を有するものであることは指摘されており(例えば、高度情報通信社会推進本部 電子商取引等検討部会
第12回会合議事要旨(http://www.kantei.go.jp/jp/it/980511dai12.html)
における5 会議経過の<3 「個別論点」について>参照)、かかる認証の問題を広くとらえる必要があるとかんがえたからである。その結果、デジタル署名は、デジタル認証のための一つの手段ということとなる。
(注2 )
非常に多数の参考文献がある。法的なポイントに重点を置く資料として、
・米丸 恒治「 ドイツ・デジタル署名法と電子認証 」立命館法学第256号 1997年
第6号
・同 「ドイツ流サイバースペース規制」立命館法学1997年 5号
・吉田一雄「電子署名の法律入門 」法学セミナー513号 53頁(日本評論社)1997
・早貸淳子「商業当期制度を基礎とした電子認証制度の整備について」ジュリスト1117号
P114(有斐閣)1997
・信森毅博「認証と電子署名に関する問題」
などが、あげられる。
なお、政府関係資料については、「高度情報通信社会推進本部電子商取引等検討部会報告書『電子商取引等の推進に向けた日本の取組み』添付の参考資料(http://www.kantei.go.jp/jp/it/980622siryou.html)が、よくまとまっている。
なおかかる報告書掲載の参考文献のうち、URLの記載がないが、以下、8月5日現在で、みつけられたものについて、記載を付加すると以下のようになる。
○「電子取引法制に関する研究会(制度関係小委員会)報告書」 (http://www.moj.go.jp/PRESS/980300-1.htm)
○「電子マネー及び電子決済に関する懇談会報告書」平成9年5月23日http://www.mof.go.jp/tosin/1a1201.htm
○「個人信用情報保護・利用の在り方に関する懇談会」報告書」http://www.mof.go.jp/tosin/1a029a1.htm)
○民間部門における電子計算機処理に係る個人情報保護ガイドライン(通商産業省/平成9年3月)
○デジタル経済の時代に向けて(通商産業省/平成9年5月)
○電子商取引環境整備研究会 中間論点整理 (http://www.ecom.or.jp/miti/971127/)
○消費者取引研究会(通商産業省/平成10年3月)
○大規模プラント・ネットワーク・セキュリティ対策委員会(通商産業省/平成10年3月)
○ネットワーク認証業務に関するガイドライン(郵政省/平成9年5月)(http://www.mpt.go.jp/policyreports/japanese/group/internet/net-ninsho1.html)
○情報通信ネットワーク安全・信頼性基準の改正(郵政省/平成9年7月)
○「電気通信サービスにおける情報流通ルールに関する研究会 −報告書」
http://www.mpt.go.jp/pressrelease/japanese/new/980105j601.html)
○高度情報通信社会に向けた環境整備に関する研究会(郵政省/平成10年3月)「報告書」(http://www.mpt.go.jp/pressrelease/japanese/tsusin/980310j502.html)
○通信・放送の融合と展開を考える懇談会(郵政省/平成10年5月)(懇談会についてhttp://www.mpt.go.jp/pressrelease/japanese/tsusin/980508j501.html)
○ペイメントシステムの変革時代における個人金融サービスの在り方に関する調査研究会(郵政省/平成10年6月)
( 概要について、http://www.mpt.go.jp/pressrelease/japanese/kawase/980605j301.html)
○公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)研究会(建設省/平成9年6月)(http://www.moc.go.jp/tec/cals/)
○ 時代の変化に対応した風俗行政の在り方に関する研究会(警察庁/平成9年12月)
○(財)社会安全研究財団情報セキュリティビジョン策定委員会(警察庁/平成10年2月)http://www.npa.go.jp/seiankis2/index.htm
○情報システム安全対策研究会不正アクセス対策法制分科会(警察庁/平成10年3月)
○マルチメディアを活用した消費者取引に関する研究会(経済企画庁/平成9年4月)
(注3)注2であげた膨大な文献があり、特に、官公庁の報告書は、そのいずれも詳細なものといえるが、逆に法律全般的な立場から全体像を簡潔に整理して論じる立場は、見当たらないように思え、この覚書が、かりに存在意義があるとすれば、かかる点であろう。